インタビュー時期:2026/1月
岩手県盛岡市から北秋田市に移住し、地域おこし協力隊として伝統工芸「秋田八丈」の技術継承に取り組んでいます。ネットで偶然見つけた秋田八丈の「鳶色(とびいろ)」に心を掴まれ、「これをやりたい」と思った瞬間に北秋田市役所へ電話。いまは秋田八丈を次の世代へつなぐ挑戦の真っ最中です。
藤原健太郎さん (Iターン)
北秋田市に移住したきっかけを教えてください
僕が秋田八丈を初めて見たのは、インターネットでした。
岩手に住んでいた頃、テレビで伝統工芸の特集をやっていて、「岩手にもこんなのがあるんだ」と思ったんです。そこから「近隣の県には何があるんだろう?」と気になってネットで調べてみたら、秋田八丈が検索に引っかかって。その時に“鳶色”を見た瞬間、「これやりたいな」って強く思いました。
そこで、そのまますぐ北秋田市役所に電話しました。協力隊の募集が期限切れだったみたいなんですけど、ダメ元で電話してみた、っていう感じですね。結果的にそれが移住につながりました。

仕事は何をされているんですか?
いまは地域おこし協力隊として、秋田八丈の技術を継ぐための活動をしています。工房では、草木染めの絹織物を加工して、「反物」(着物に仕立てる生地)をつくる仕事が中心です。
基本は着物の反物ですが、カードケースや小銭入れみたいな小物をつくることもあります。
仕事をしていて「楽しいこと」「辛いことや大変なこと」はありますか?
まず、仕事はめちゃくちゃ楽しいです。理由は“自由度”が高いからです。秋田八丈には基本の色(黒・黄色・鳶色)がありますが、その枠の中で柄の組み方を工夫できたりして、そこが面白いんですよね。
辛いこととか大変なことは、僕の感覚としては、まったくないです。染織とか着物業界に携わったことのない状態で来たので、そもそも何が“大変”なのか基準が分からなくて(笑)。全部「こういうもんだ」って受け止めているところが大きいのかもしれません。

北秋田市の印象を教えてください
最初に移住体験で来た時に思ったのが、「懐かしいな」ということでした。僕の祖父母が岩手の雫石町に住んでいましたが、町並みが雫石町とあまり変わらない感じがして、帰省してる感覚に近かったんです。
暮らしの面でいうと、お店があるところにはそれなりにあって、ないところには全然ない、というメリハリがありますね。山に囲まれている感じも含めて、土地の雰囲気が分かりやすいなと思います。

お気に入りのスポットやお店等あれば教えてください
正直、僕は普段あまり出かけないんですよね。基本、家と工房の行き来のみです(笑)。お祭りやイベントも、ほとんど行っていなくて、北秋田市内は仕事のみ、みたいな生活になっています。
ご飯も自炊で、外食もしないです。わざわざ買いに行って食べたいというより、「だったら自分で作るか」となってしまうタイプで。料理もスイーツも、気づいたら自分で作って食べています(笑)。
北秋田市に「あったらいいな」と思うお店やサービスはありますか?
ひとつは、移住に関わる「住まい」ですね。特に鷹巣エリアは家賃が高いと感じます。「大館とか能代に住んで、こっちに仕事しに来るか」ってなっちゃう人もいると思うんですよ。
市が空き家活用を進めているので、回収した家をお手頃価格で貸せる仕組みがあると、移住者は来やすいのにな、って正直思います。
もうひとつは、観光客を呼ぶための「より多様なニーズに対応できる宿泊施設」です。北秋田市って観光できる場所や景色が良い場所がたくさんあるのに、泊まるところの選択肢が少ないのがもったいないなと感じます。宿泊施設が整えば、雇用が生まれる面もあると思います。

休日の過ごし方を教えてください
休日は、平日にできないことをやっています。作り置きを作ったり、掃除したり、買い出ししたり。ただ最近は、休日でも仕事のことを考えることが多いですね(笑)。
たまにまとまった休みがあると、旅行に行きます。温泉に行ったり、バイクに乗って遠出したり。最近だと山形に行きました。下道で片道6時間くらいかけて(笑)。

これからの挑戦:秋田八丈を「伝統工芸」に
いま最終目的にしているのは、秋田八丈を「伝統工芸」に登録することです。登録には基準があるんですけど、今は働いている人が少なくて条件に達していないんですよ。
人数の条件においても、最低4人くらいでクリアできるんじゃないか、という見方もある一方で、文面上はもっと人数が必要であるとされていたり。さらに、一定の範囲内に複数事業者があるか、という基準もあって、ハードルは高いです。
いまは奈良田さん(師匠)と僕の2人なので、ここから秋田八丈をもっと売って、雇用を生んで、人を増やして、次の世代に継いでいける形をつくりたいです。やり方は、組合を作って織り子さんを増やすという方法もあるのではないかと考えています。
「伝統工芸」にしたい理由は、登録されると国や自治体から支援を受けやすくなるからです。続けていく土台ができれば、秋田八丈を次世代に残していける可能性が高まると思うんです。
それにつながる動きとして、海外販売やインバウンドも今年から始めています。体験コンテンツとしては、染め作業の体験などもできるんじゃないか、と考えているところです。

これから移住してくる方へ
僕から伝えたいのは、「とりあえず来てみてください」ということです。住んでみなきゃ分からないことが多いので。気候が合うかどうかも含めて、体感しないと判断できないと思います。
北秋田市の移住体験制度は、絶対利用した方がいいです。僕も移住体験制度を利用して来て、2泊3日で午前は職場体験、午後は市の職員の方に各地を案内してもらいました。阿仁地域や、根っ子集落のコーヒー屋さん、伊勢堂岱遺跡、大太鼓の館…職場以外もいろいろ見ることができて、この制度は利用して本当に良かったです。
あと、できれば冬にも来てほしいです。冬こそがこの地域のリアルだと思うので。僕も雪の量を把握していなくて、それは移住後に「大変だったな」と思ったところです。盛岡市はここまで降らないので。
北秋田市内でも鷹巣・合川・森吉・阿仁で降雪量が全然違うので、最初に住む場所を決めるときは、現地の人に気候(特に雪)を聞いてから決めた方がいいと思います。雪かきも体験しておくと安心です。

インタビューを終えて
鳶色へのひと目惚れから始まった藤原さんの北秋田暮らし。いまは「秋田八丈を未来へ残す」という目標に向かって、日々、技術と向き合っています。移住は来てみないと分からないことばかり。まずは移住体験で、できれば冬も含めて、北秋田市のリアルを体感してみてください。